札幌地方裁判所 昭和41年(ソ)2号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【決定理由】本件記録によると、抗告人が本件収去命令の申立において、その収去を求める目的物を単に、別紙図面(省略)でその範囲を示した夕張市本町五丁目三〇番地宅地二三四・七一平方メートルのうち通路の西側(以下本件土地という)の債務者(抗告人)所有地上物とのみ表示していること、右申立の基礎となつた債務名義たる夕張簡易裁判所昭和四〇年(コ)第六号土地境界確認請求事件の調停調書(以下本件調停調書という)においても、収去の目的物は、右と同旨の表示があるにすぎないことが認められる。
このように収去すべき地上物を具体的に摘示していない場合にあつても、収去すべき物件の所在する土地の範囲が特定され、「その地上物」との表示があれば、このような表示のある調停調書は、特に明示された除外物件を除いて、調停成立時において右土地上に存在するすべての地上物を収去すべきことを定めている趣旨と解すべきである。
ところで、本件債務名義上収去すべき物件の所在する土地の範囲は、本件調停調書の記載によつて特定していると判断されるのであるから、本件債務名義上収去すべき地上物は特定されているものである。
しかしながら、裁判所が右のような債務名義にもとづいて、民訴法七三三条の決定をなすに当つては、収去の目的物を具体的に明示することを要する。すなわち、右の地上物が、本来代替執行に親しむ物件であるかどうか(たとえば、動産であるとすれば、本件債務名義上前示土地を明け渡すべきことが表示されていること記銀上明らかであるから、その執行として、収去命令を要せずして執行吏においてこれを取り除くことができる。民訴法七三一条三項)、現存する地上物が、調停成立当時において右地上に存在した物件と同一性を有するかどうか、などを判断して、収去の目的物を具体的に表示しなければならない。
本件代替執行の申立は、収去の目的物を具体的に表示していないのであるが、このような場合には、執行機関たる第一審の受訴裁判所としては、債権者をしてこの目的物を具体的に表示するように補正せしめ、あるいは債権者の主張を明らかにするためにこれを審訊して(民訴法一二五条二項)その申立の趣旨の明確を期すると共に、債務者に対する必要的審訊(民訴法七三五条但書)などによつて、当該申立の適否を決すべきである。
原決定は、収去の目的物を具体的に表示していない点において、違法であり、本件即時抗告は、この点において理由がある。(柳川俊一 丸山忠三 新村正人)